





























本記事と漫画の日額20,000円・12時間拘束、1日500円の不足、月20日・年240日稼働は説明用の仮定であり、北条送運の料金や実際の契約事例を示すものではありません。漫画の相談・配送停止などの場面は説明用に構成した架空の描写です。安い運賃が必ず事故や配送停止につながるという意味ではありません。
はじめに
「軽貨物の運賃相場は、いくらくらいですか?」
荷主企業様が運送会社を探す際、気になることの一つが運賃です。
できるだけ運送費を抑えたい。
これは企業経営において自然な考え方でしょう。
一方、軽貨物運送会社にも、こんな考え方があります。
「この地域の相場は、このくらいだから」
「他社もこの金額で受けているから」
「これ以上高くしたら仕事が来なくなるから」
しかし、そもそも、その運賃相場は何を根拠に決まっているのでしょうか。
そして、その運賃で、安全な配送を継続できるのでしょうか。
今回は、北条送運合同会社の代表・益子に、軽貨物運賃の考え方について話を聞きました。
荷主企業様だけでなく、軽貨物運送会社にも考えてほしいテーマです。
1. そもそも「運賃相場」とは何なのか?
――益子さん、今回のテーマは「軽貨物の運賃相場、それで大丈夫?」ですが、なぜこのテーマを取り上げようと思ったのでしょうか?
益子:
「荷主企業様にも考えていただきたいですし、軽貨物運送会社にも考えてほしいことだからですね」
運送費を決める際、他社の料金を参考にすることはあります。
それ自体が悪いわけではありません。
しかし、相場という数字は、それぞれの運送会社が安全に事業を継続できることまで保証するものではありません。
――つまり、相場だから適正な運賃とは限らない、ということですね。
益子:
「そうです。まず、自分たちの原価を理解する必要があると思います」
相場は市場で形成された価格の目安です。
一方、原価は、その仕事を実際に行うために必要な費用です。
この二つは必ずしも一致しません。
2. 日額2万円という数字を考える
例えば、12時間拘束される配送業務があったとします。
運賃は日額2万円。
この金額だけを見て、高いと感じるでしょうか。それとも安いと感じるでしょうか。
益子:
「まず考えてほしいのは、その2万円が丸々ドライバーの収入になるわけではないということです」
配送には車両が必要です。
燃料を使い、タイヤは摩耗し、オイル交換などの整備も必要になります。
任意保険や車両の維持費も発生します。
日額2万円の仕事でも、そこからさまざまな費用を負担しなければなりません。
また、12時間拘束されるなら、その時間に別の配送を引き受けることも難しくなります。
大切なのは、日額という一つの数字ではなく、拘束時間と必要経費を含めて考えることです。
3. 最低賃金と比較すると何が見えてくるのか
日額2万円を12時間で割ると、約1,667円です。
これは、車両経費などを差し引く前の金額です。
ここから燃料費、保険料、整備費、車両費などを負担すると、実際に残る金額はさらに小さくなります。
最低賃金は、原則として雇用される労働者に適用される制度です。
そのため、業務委託の個人事業主に対して、最低賃金をそのまま適用して運賃の適法性を判断することはできません。
しかし、労働時間に対してどの程度の金額が残るのかを考える比較材料にはなります。
――運賃を時間で割るだけでは、十分ではないんですね。
益子:
「そうですね。そこからさらに経費がかかるわけですから」
運賃を考えるうえでは、時間に対する対価と、輸送に必要な経費の両方を把握する必要があります。
4. 原価を把握しない運賃設定の問題
軽貨物の仕事には、目に見えやすい費用と、見えにくい費用があります。
燃料代や高速道路料金は、比較的把握しやすい経費です。
一方、タイヤ交換費用や車両の故障に備える費用などは、毎日発生するわけではありません。
しかし、毎日発生しないからといって、必要がないわけではありません。
タイヤは徐々に摩耗します。
車両も使い続ければ整備が必要になります。
将来的には車両の買い替えも考えなければなりません。
これらを見込まずに運賃を設定すると、日々の売上はあっても、必要な費用を確保できない状態になる可能性があります。
益子:
「原価を把握していなければ、その運賃で本当に仕事を続けられるのか、判断できないと思うんです」
5. たった500円の違いが何を生むのか
ここで、運賃が1日500円不足しているケースを考えてみましょう。
500円という数字だけを見ると、大きな差には感じないかもしれません。
しかし、月20日稼働すれば1万円。
年間240日稼働すれば12万円になります。
この12万円は、車両整備やタイヤ交換などに充てられる可能性のある金額です。
益子:
「例えば、1日500円足りないことで、タイヤ交換に必要なお金を確保できなくなるとしたらどうでしょうか」
問題は、年間12万円という金額そのものではありません。
そのお金が不足したことで、何が起こるのかです。
6. 数字は根拠であって、結論ではない
――原価を数字で示すことが大切なんですね。
益子:
「数字で示すことは大切なんですけど、数字はあくまで根拠なんですよ。
それによって、どんなリスクが発生するのか。
そこまできちんと言語化できないと、お客様には伝わらないと思うんです」
例えば、運賃が500円不足しています、と伝える。
それだけでは、荷主企業様にとって、なぜ運賃を見直す必要があるのか分からないかもしれません。
しかし、その不足によって、必要な車両整備のための費用を確保できなくなるとしたらどうでしょうか。
運送会社が伝えるべきなのは、単に利益が足りないという話だけではありません。
その運賃のままでは、どのような問題が起こり得るのか。
そこまで説明することが重要なのです。
7. タイヤ交換費用が不足するとどうなるのか
益子:
「例えば、タイヤの溝がなくなって、つるつるになった車で配送に出るようなことが起きたら、どうでしょうか」
タイヤの摩耗が進めば、特に雨天時などに安全上のリスクが高まります。
本来であれば、必要な時期に交換しなければなりません。
しかし、交換費用を確保できていなければ、整備を先延ばしにする誘惑が生まれるかもしれません。
もちろん、必要な整備を怠ったまま運行してよいわけではありません。
運送会社には、安全に運行できる車両を維持する責任があります。
ただ、運賃が必要な経費を賄えない水準であれば、その責任を果たし続けることが経営上難しくなる可能性があります。
運賃の不足は、単に運送会社の利益の問題にとどまらないのです。
8. 冬用タイヤを準備できなかったら?
益子:
「冬になってもスタッドレスタイヤを買うお金がなくて、ノーマルタイヤのまま12月、1月と過ごしたとしますよね。
それで、大丈夫そうだと思っていたら、2月に大雪が降る。
そうなったとき、配送に出発できません、ということが起こるわけです」
積雪や凍結が発生した道路では、適切な滑り止め措置が必要です。
必要な装備を用意できなければ、安全に運行できず、配送を見合わせなければならない場合があります。
ここで困るのは、運送会社だけでしょうか。
そうではありません。
荷主企業様が予定していた納品にも影響する可能性があります。
取引先への納品が遅れれば、その先の生産や販売などにも影響するかもしれません。
もちろん、冬用タイヤを装着すれば、どんな降雪でも運行できるというわけではありません。
しかし、必要な備えができているかどうかは、配送の継続性に関わる大切な要素です。
運賃が不足することで、安全に運行するための備えが難しくなる。
このようなリスクまで伝えてこそ、運賃についての話し合いに意味が生まれるのではないでしょうか。
9. 安い運賃は、荷主企業様にとって本当に得なのか
――荷主企業様としては、できるだけ運送費を抑えたいという考えもありますよね。
運送費を抑えることは、企業にとって重要です。
しかし、運賃だけを基準に配送会社を選んだ場合、見えにくい負担が発生する可能性があります。
例えば、車両故障による配送の中断。
整備不足に伴う事故のリスク。
必要な運行体制を維持できなくなることによる、突然の配送停止。
こうした問題が起きれば、安い運賃で配送を依頼できていたメリットが失われる場合もあります。
運賃の安さには価値があります。
ただし、安さと、安定して安全に運んでもらえることは、別々に確認する必要があります。
10. 運賃とドライバーの所得
運送会社の経営を考えるうえでは、ドライバーの所得も重要です。
適正な運賃を確保できなければ、車両経費を負担したあとに残る報酬が少なくなる可能性があります。
もちろん、個々のドライバーの所得は、仕事の内容や稼働日数、経費、契約条件などによって異なります。
しかし、十分な対価を得られない仕事を長期間続けることは難しいでしょう。
益子が考える運送業の価値は、単に安く荷物を運ぶことではありません。
安全に、質の高い仕事を行い、その仕事に見合った対価を得ること。
そのためには、運賃設定の段階から、ドライバーが継続して働ける条件を考える必要があります。
11. ドライバーが定着しなければ、配送品質も安定しない
ドライバーが継続して働けることには、荷主企業様にとっても意味があります。
同じ配送を担当し続けることで、納品先のルールや荷物の特徴、作業上の注意点などを理解できる場合があります。
担当者が頻繁に変われば、その都度、業務内容の共有や教育が必要になることもあるでしょう。
もちろん、長く担当していることだけで配送品質が決まるわけではありません。
しかし、経験や知識を蓄積しやすい環境は、安定した配送体制を考えるうえで大切です。
運賃は、単に荷物を運ぶ一回分の料金ではありません。
長期的な配送品質や、運行体制の維持にも関係しているのです。
12. 「自社で雇用するより安い」だけでよいのか
荷主企業様が配送業務を外部委託する理由の一つに、自社で配送担当者を雇用する場合との費用比較があります。
自社で人を雇う場合には、給与だけでなく、社会保険料や車両費、採用・教育などの負担も考える必要があります。
そのため、運送会社への委託が合理的な選択になることはあります。
しかし、単に「自社で雇用するより安い」という理由だけで、運賃が適正だと判断できるわけではありません。
運送会社にも、車両の維持や整備、ドライバーへの報酬、安全管理などの費用が発生します。
大切なのは、外部委託によってどのような業務上の価値が得られるのかということです。
必要なときに配送を依頼できる。
車両を自社で保有・管理する負担を減らせる。
営業担当者が配送から離れ、本来の業務に集中できる。
このような価値も含めて、運送費を考える必要があります。
13. 高品質と高収益は対立するものではない
北条送運では、安全運行を土台として、高品質・高収益を大切にしています。
高収益という言葉を聞くと、荷主企業様から高い運賃をいただくことだと思われるかもしれません。
しかし、単純に値上げすることだけが高収益ではありません。
配送ルートの見直し。
積載効率の改善。
不要な拘束時間の削減。
運行条件に適した車両や人員の配置。
こうした工夫によって、必要な費用を抑えながら、荷主企業様への提供価値を高めていくことも重要です。
また、高品質な配送を安定して提供できれば、その品質に見合った運賃を提案する根拠にもなります。
安全運行を守り、高品質な配送を提供し、必要な利益を確保する。
この三つは、互いに関係しています。
14. 北条送運が提供したい「安心」という価値
配送の価値は、荷物が目的地へ届くことだけではありません。
荷主企業様が、安心して仕事を任せられること。
困ったときに相談できること。
必要な情報を共有し、納品条件について一緒に考えられること。
これらも、運送会社が提供できる価値です。
北条送運が目指しているのは、単に運賃が安いから選ばれる会社ではありません。
荷主企業様が配送について困ったときに、相談先として思い出していただける会社です。
そのためには、安全に運行するための体制を維持し、品質を高め、継続して事業を行えるだけの利益を確保しなければなりません。
運賃は、その土台を支えるものです。
15. 運賃相場を、もう一度疑ってみる
――最後に、荷主企業様と軽貨物運送会社、それぞれに伝えたいことは何でしょうか?
今回のインタビューで繰り返し登場したのは、原価と、その先にあるリスクの話でした。
相場と比較することは、判断材料の一つです。
しかし、相場に合わせているからといって、安全な配送を継続できる保証はありません。
運送会社は、自社の原価を把握する。
必要な費用を確保できているか確認する。
もし不足しているのであれば、その不足によって何が起こり得るのかを具体的に説明する。
一方、荷主企業様は、運賃の安さだけでなく、どのような配送品質や運行体制が提供されるのかを確認する。
そして、双方が納得できる条件を考えていく。
運賃には、その会社がどのような配送を継続できるかという問題が含まれています。
おわりに|軽貨物の運賃相場は、八回は疑ってかかるべし
相場は、便利な判断材料です。
しかし、その数字が本当に適正なのかは、別の問題です。
車両の維持費は足りているか。
必要な整備を続けられるか。
ドライバーが継続して働けるか。
安全に配送できるか。
荷主企業様が安心して任せられる体制を維持できるか。
そこまで考えて初めて、運賃の妥当性が見えてくるのではないでしょうか。
1日500円の違いであっても、積み重なれば、車両整備に必要な費用に相当することがあります。
重要なのは、その500円が不足しているという数字だけではありません。
その不足が、荷主企業様の物流にどのようなリスクをもたらすのか。
そこまで考え、説明できる運送会社でありたい。
そして、荷主企業様にも、運賃の裏側にある安全や配送品質を考えていただきたい。
軽貨物の運賃相場は、八回は疑ってかかるべし。
相場を知ることと、相場を正しいと信じることは違います。
北条送運合同会社は、安全運行・高品質・高収益を大切にしながら、荷主企業様とともに、持続可能な物流のあり方を考えていきます。
北条送運合同会社
安全運行を土台に、高品質・高収益を追求する軽貨物運送会社。
荷主企業様の課題解決を第一に、物流の価値を一緒に考えます。