











漫画の荷主企業様「久保商事」および相談・会話の場面は、インタビュー内容をもとに構成した架空の設定です。実際の取引・実績を示すものではありません。
はじめに
自社の商品を、営業担当者が取引先まで届けている。
中小企業では、こうした働き方を見かけることがあります。
営業担当者は、もともとお客様のところへ訪問する仕事です。
それなら、訪問のついでに商品も届ければ効率がいい。
確かに、合理的な考え方です。
しかし、取引先が増え、配送件数も増えていったとき、その働き方はどうなるのでしょうか。
今回は、北条送運の代表・益子に、営業担当者が配送を兼務することで起こる問題と、その改善方法について話を聞きました。
1. なぜ営業担当者が配送までしているのか?
――そもそも、営業担当者が商品を配送するのはなぜでしょうか?
益子:
「一番分かりやすい理由は、お客様のところへ行くから、ついでに配送もしてしまおう、ということだと思います。
営業担当者は取引先へ訪問しますよね。
だったら、そのとき商品も持っていけばいいじゃないか、と。
これは別に、最初から悪い考え方ではないんです」
訪問と配送を一度に済ませられれば、移動の手間を減らせる場合があります。
また、商品を届けた際に、取引先の担当者と直接話すこともできます。
しかし、この働き方を考える際には、まず営業活動を二つに分ける必要があると益子はいいます。
2. 営業には「新規」と「既存」がある
――営業活動を二つに分ける、というのは?
益子:
「新規顧客への営業と、既存顧客への営業ですね。
これは、どちらも大切だと思っています」
新規顧客への営業は、新しい取引先を開拓するための活動です。
一方、既存顧客への営業には、すでに取引のあるお客様との関係を維持し、さらに深めていく役割があります。
益子:
「既存顧客への営業って、追加の商品をご案内するアップセルもありますけど、それだけじゃないですよね。
最近、商品の品質はどうですか、とか。
以前ご提案したことは、その後どうですか、とか。
そういう満足度のヒアリングも含まれると思うんです」
例えば、新規契約を獲得した営業担当者が、その後も定期的に訪問する。
そして、契約時に提案した内容が実際に役立っているかを確認する。
それは、顧客との関係を継続するうえで自然な流れです。
「契約を取ったらそれっきり、というより、自分が提案したことについて、その後の状況を確認する方が、話としてもつながりますよね」
3. 最初は合理的だった「ついでの配送」
――それなら、既存顧客への営業と配送を一緒に行うことは、むしろ良い方法にも思えます。
益子:
「そうなんです。最初はいいと思うんですよ。
お客様のところへ行って、商品を届ける。
そのついでに、最近どうですか、何か困っていませんか、と話を聞く。
でも、その営業担当者が優秀で、新しい契約をどんどん取ってきたらどうなるでしょうか」
新しい取引先が増えれば、配送先も増える可能性があります。
最初は数件だった配送が、いつの間にか一日の予定の大部分を占めるようになる。
そこで、当初は合理的だった仕組みが、少しずつ変化していきます。
「配送の件数が増えると、今度は配送を終わらせることが一番の目的になってしまうんです」
4. 問題① 既存顧客へのヒアリングができなくなる
――配送を終わらせることが目的になると、何が問題なのでしょうか?
益子:
「まず一つ目は、既存顧客へのヒアリングができなくなることです」
もともとは、取引先へ商品を届けながら、商品の使用状況や満足度を確認するための訪問でした。
しかし、配送件数が増えると、一件あたりに使える時間は限られてきます。
次の配送先へ急がなければならない。
決められた時間までに商品を届けなければならない。
その結果、取引先の担当者と十分に話す時間がなくなってしまいます。
益子:
「最初は配送のついでにヒアリングしていたはずなんですよ。
ところが、いつの間にか配送することが一番の目的になって、肝心のヒアリングができなくなる。
これが一つ目の問題です」
つまり、営業担当者は今までどおり取引先へ訪問しているのに、本来の営業活動が十分にできていない状態です。
訪問していることと、営業活動ができていることは、必ずしも同じではありません。
5. 問題② 新規顧客への営業ができなくなる
――もう一つの問題は何でしょうか?
益子:
「新規営業ができなくなることですね。
既存のお客様への配送で一日が埋まってしまえば、新しいお客様のところへ行く時間なんてなくなります」
既存顧客との関係を維持することは、もちろん大切です。
しかし、中小企業が取引先を増やしていくためには、新規顧客への営業活動も必要になります。
益子:
「私は、既存顧客への営業と新規営業は、少なくとも同じくらい大切だと思っています。
どちらか一方だけをやっていればいい、という話ではないんです」
ここで注意したいのは、先ほどの問題とは内容が異なることです。
一つ目は、既存顧客を訪問しているのに、十分なヒアリングができなくなる問題。
二つ目は、新しい取引先を開拓するための時間そのものがなくなる問題。
どちらも営業機会の喪失ですが、失われている活動は違います。
6. 顧客数が頭打ちになる可能性
――その状態が続くと、企業にはどのような影響があるのでしょうか?
益子:
「顧客数が頭打ちになると思います。
新規営業ができなければ、新しいお客様を増やすことが難しくなりますよね」
さらに、既存顧客との契約が永遠に続くとは限りません。
取引先の事業環境が変わることもあります。
商品の取り扱いが終了することもあります。
競合他社との取引へ切り替わる可能性もあります。
益子:
「お客様は、一生契約を続けてくれる保証なんてないわけです。
だから、新規顧客が増えなければ、横ばいならまだいい方かもしれない。
場合によっては、お客様が減っていく可能性だってありますよね」
一見すると、営業担当者が毎日忙しく働いている状態です。
しかし、その忙しさが、企業の将来の成長を妨げているかもしれません。
7. 毎回、営業担当者が配送する必要はあるのか?
――では、どうすればこの問題を改善できるのでしょうか?
益子:
「まず、営業担当者がどのくらいの頻度で既存のお客様のところへ行っているかを確認したいですね」
例えば、毎日同じ取引先へ商品を届けている営業担当者がいたとします。
その取引先へ毎日訪問する必要があるのでしょうか。
もちろん、毎日商品を届ける必要はあるかもしれません。
しかし、営業担当者自身が毎回商品を届ける必要があるとは限りません。
益子:
「例えば毎日配送しているなら、毎日営業担当者が行く必要はないんじゃないか、ということです。
もちろん、既存のお客様への営業訪問は大切ですよ。
ただ、配送と営業訪問を毎回セットにする必要があるのかは、一度考えてもいいと思うんです」
配送は配送として行う。
営業担当者は、必要なタイミングで取引先を訪問し、時間を取ってヒアリングする。
このように役割を整理できれば、限られた時間をより有効に活用できる可能性があります。
8. まずは現在の配送スケジュールを教えてください
――北条送運では、具体的にどのような提案ができるのでしょうか?
益子:
「まず、いつもどんなスケジュールで配送しているのかを教えていただきたいですね。
もちろん、すべてが決まったルート営業というわけではないと思います。
日によって配送先が違う場合もあるでしょうし。
だから、まずは実際の配送スケジュールを見せていただきたいんです」
そこで確認するのは、例えば次のような内容です。
- どの取引先へ配送しているのか
- どのくらいの頻度で配送しているのか
- 何時頃に出発して、何時頃に戻っているのか
- どんな商品を運んでいるのか
- 営業担当者自身が訪問する必要があるのはどの取引先なのか
これらを確認したうえで、北条送運が対応できる部分を検討します。
9. すべての配送を任せてもらう必要はない
――配送業務をすべて外部委託するという提案でしょうか?
益子:
「いや、そういうことではないです。
まずは今の配送スケジュールを見せていただいて、その中から私たちがお手伝いできるところを抽出します。
そのうえで、こういう部分なら対応できますが、どうでしょうか、という提案をするんです」
営業担当者が直接訪問することに意味のある取引先もあります。
商品を届ける際に、詳しい説明や商談が必要な場合もあるでしょう。
そうした活動まで、無理に運送会社へ置き換える必要はありません。
一方で、単純に商品を届けることが目的になっている配送なら、運送会社が代わりに担当できる可能性があります。
営業担当者が行くべき訪問と、配送として切り分けられる業務を整理する。
そのうえで、荷主企業様に合った方法を提案することが大切だと考えています。
おわりに|営業担当者が営業できる時間をつくる
営業担当者が商品を届けること自体は、決して悪いことではありません。
むしろ、取引先が少ないうちは、合理的な方法である場合もあります。
しかし、取引先が増え、配送件数が増えていったとき、その働き方を見直す必要が出てくるかもしれません。
今回、益子が指摘した問題は二つです。
一つ目は、既存顧客へのヒアリングができなくなること。
二つ目は、新規顧客への営業ができなくなること。
配送を外部へ依頼することが目的ではありません。
営業担当者が、本来取り組むべき活動に時間を使えるようにすること。
そのために、まずは現在の配送スケジュールを確認し、運送会社がお手伝いできる業務を探していく。
北条送運は、そんな形で荷主企業様の営業活動を支えたいと考えています。
もし、営業担当者が配送に追われていると感じているなら、一度、現在の配送スケジュールを見直してみませんか。
「この配送、営業担当者が毎回行く必要はあるだろうか?」
そんな小さな疑問から、改善が始まるかもしれません。
北条送運合同会社
荷主企業様の営業活動を、物流の面から支える会社へ。